François Linke
François Linke, index No.29 ヴィトリン
こちらは1907年につくられた、François Linke : フランソワ・リンケ(1855-1946) のヴィトリン(ディスプレイキャビネット)です。
紛うことなきフランスインテリア界最大の巨匠、フランソワ・リンケ。
フランスアンティークがお好きな方であれば、一度はこの名を聞いたことがあるのではないでしょうか。
リンケが生み出した 他に類を見ないほどデコラティブでラグジュアリーな家具の数々は、製作から年月を経た今もなお 特別な美術品として世界中から賞賛され続けています。
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1875年ごろパリに工房を構え、有名老舗家具メーカーなどからの依頼製作に携わっていたリンケ。
1890年ごろから独自のデザインやブランドを確立させていくことに注力し、1890年代中旬には 非常に斬新で贅沢な家具を作るメーカーとして、 その名をパリにとどろかせていきます。
そしてフランスインテリア界の頂点に居座ることを決定づけた最大の功績は、1900年のパリ万博出展。
すでに各有名メーカーと競い合う実績と知名度を誇っていたリンケでしたが、その中でもさらに卓絶した地位を掴み取るため、当時の有り金をすべて使い 持てる技術の極致に達する家具を製作し出展します。
社の進退をかけ まさに背水の陣で挑んだその舞台。世界中から注目されるその大会で、狙い通りリンケの作品は あまりにも素晴らしい と世界中の国王や政府の人間を虜にし、名だたる有名メイカーを差し置いて最高の評価を獲得、
ついにフランスの美術的家具製作のトップの座という、揺るぎない地位を得ることに成功したのです。
その後もリンケはその地位に甘んじることなく、パリの一等地にショールームやワークショップを構えて最高峰のインテリアを作り続け、 世界中の王宮や富裕層の邸宅へ作品を多数おさめました。
その作品の数々は今も各国の宮殿や美術館に保管されるほか、熱烈なコレクターの間で高値で取引され、また少なくない数の作品がフランスの文化財として保護されています。
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そんなリンケのヴィトリンを、今回縁あって ロホンが仕入れてくることに成功しました。
一流のオーラがたちこめるこの姿。まずリンケとは知らずとも誰の目にも明らかな、他と一線も二線もを画した品質の高さが我々を唸らせます。
艶やかな木材はすみずみまで美しく均され、製作から100年以上たっているのがまるで信じられないほど整然とした姿。
扉の開閉時には、わずかなブレもない素晴らしい品質が指先に伝わり、閉めた扉の隙間には髪の毛一本も入る余地はありません。※木材は温度や湿度で常に伸縮し続けていますので、アンティーク家具としてこの事実は “ありえないこと” と言ってもまったく言い過ぎではありません。 相当なトップレベルの材と技術が使われていることの証です。
アンティーク家具に使われるトップの大理石は通常 上に乗せられるだけですが、こちらには はめ込みの凸凹加工までされており、こんなところまで手がかけられるのかと驚かされました。
内部突き当りはミラーになっているため中におさめるコレクションを映し、輝きは二倍三倍に膨れ上がります。ミラーの裏側には1907年製作のスタンプが押され、この作品がつくられた年を断定させています。
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しかし実はこの家具にはサインが入っておらず、仕入れ時には現地でも作者名は把握されていませんでした。
これまでにフランス現地で何万台もの家具を見てきたロホンが、ただとにかく”異常に良い作品だ”として目にとめたこの一台。
まさかこれはリンケのものではないかと気付いたのは、日本の当工房へ移し、修復作業でロホンが隅々まで「解剖」した時。
通常では見えない場所に隠された、リンケに繋がる複数のヒントを見つけたからです。
それからその気付きを確信に変えるため私たちは、フランスまたイギリスの 名だたる専門家の方々へコンタクトをとり、念には念を入れてさまざまな方面からこの作品を深掘りし、長い時間をかけ確証を重ね、ついにこれが紛うことなきリンケの作品であると 断定するに至りました。(その過程と得られた検証結果は 書くと大変に長くなりますので割愛いたしますが、お問合せいただきました方へ直接じっくりとお話させていただきます。)
修復過程では、アンティーク家具を隅々まで知り尽くしているからこそわかる 細部のレベルの高さに、何度も驚かされました。
そして同時進行で「リンケ」へのヒントを調べてひとつずつクリアにしていくたびに、ロホンの手に感じるその驚き それはやはり「リンケ」故なのだと裏付けされ、また感嘆させられました。
それはパズルのピースが埋まっていくような 実に小気味良い感覚の連続だったと、ロホンは言います。
我々にとっても憧れであるこの巨匠の作品が、偶然にも当工房へ来てくれたその大きな幸運。そしてその修復を担い 一流の仕事を自らの手に感じ目に焼き付けられた奇跡のような幸運に、神に感謝せずにはいられなかったとも、ロホンは言いました。
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最後に、
この作品の細部まで手で触れそして背景を掘り下げたその二つのことによって、辿り着いた こたえがあります。
それは、結局ブランド名は看板にすぎず、その”看板”をはるかに越える実態が、本物には確かに備わっているということです。
作者がすでに存在しない現代においては 著名な作家名が入っているのはもちろん価値のあることですが、では作られた当時、はたしてそれ(有名作家の名が刻まれていること)が一番求められることだったのか?いいえ、それが「一番」では、決してなかったはずです。
まず磨きぬかれた技術と品質。やはりそれが本質であり一番重要なことであると、改めて感じさせられました。
世界のトップにたつほどのものですから、そこへかける飽くなき追及は 生半可なものでなかったでしょう。しかしその職人魂こそが、1900年以降リンケというブランドをフランスインテリアのトップの座に君臨させ続けた一番の要因であったのです。
100年以上経ってなお 保たれるこの素晴らしい状態と 名乗らずとも滲み出るこのオーラはその結果であり、この完璧な姿を前に、改めて物の本質を教えられた気がいたします。
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超一流の名がつくのはこういうことかと、深掘りするほどに納得させてくれたこのリンケのヴィトリン。
職人の魂をまざまざと見せつけてくる この そう大きくない一台には、我々の想像をはるかに越える英知と努力 そしてフランスインテリア界のトップという誇りが、いっぱいに詰まっているのでしょう。
この感動を我々のなかだけにとどめておくのは、罪と言うものです。
ぜひ多くの方に ご自身の目で見、触って、じっくりとこの奇跡を感じ取っていただきたい。そう願わずにはいられない、至極の逸品です。
タイプ: ヴィトリン | スタイル: Transition | 年代: 1907 | 輸入国: France - Paris |
材質 | ボディ: オーク/マホガニー | 表面: マホガニー | 仕上げ: ニス |
サイズ | 横幅: 78.3 cm | 奥行: 40.5 cm | 高さ: 154 cm |
商品番号: LPC942 / Sold out | |